
・新築で購入した自宅に不具合を発見した
・クラックがあるんだけど、放っておいても大丈夫?
・クラックが発生する原因を知りたい
・工務店と交渉に必要なことは?
こういった疑問に答えます。
そのクラック、施工不良かも?新築戸建てで発生している構造クラックは超危険。10年以内なら工務店に確認・交渉しましょう
先日こちらの記事で、『賃貸で良いのでは?』という記事を寄稿しました。
コロナ禍もあり、通勤環境の変化と快適な在宅ワーク環境の希望から、新築戸建てを検討する人も多いと思います。

新築戸建てというと一般的には、地場の工務店が建てた木造二階建てもしくは木造三階建ての物件を、不動産会社が仲介して販売しています。
勿論注文住宅を戸建てのメーカーに発注することも可能ですが、その場合は建物の金額が高額になりがちなので、一般には工務店が建てたもの(もしくは建築中の物件)購入するケースが多いでしょう。
高額な商品のため『欠陥なんて無いもの』と思って勢いで購入すると、後で痛い目に遭います。
意外にも新築住宅でのトラブルは多く発生しているのです。

実際、知人もほぼ同時期に同じような経験していたので、新築住宅に関するトラブルは残念ながら少なくはないでしょう。
今回は、実体験を基に「新築なのに壁にクラックが発生した場合にはどうすべきかのか?」について寄稿します。
先ずは記録を残すためにも『住まいるダイヤル』に相談しましょう

新築購入後、10年以内に何かしらのトラブルが発生した場合には、まずは『住まいるダイヤル』に電話しましょう。
住まいるダイヤルは、国土交通大臣指定の相談窓口で、住宅に関するトラブルの問い合わせができるだけでなく、記録を残すことが出来ます。
ここが最初のスタートラインです。
なお、以下のグラフは、2020年に発表された『住まいるダイヤルの相談件数の統計』です。
濃い青が新築、薄い青がリフォームに関するもので、年々のその数が増えているだけでなく、割合は新築の方が問い合わせ件数が多いことが分かります。

次のグラフは不具合の内訳ですが、ひび割れや雨漏りなどの相談が多いことが分かります。

もしあなたが、10年以内に新築を購入し、現在もその家にお住まいということであれば、上記のグラフを参考に住まいるダイヤルに相談しましょう。
ひび割れには2種類ある

ひび割れには
- ヘアクラック
- 構造クラック
2種類があります。
ヘアクラックのへアは髪の毛の意味であり、髪の毛くらい細いクラックで、具体的な指標としては『幅0.3㎜以下、深さ4mm以下』の細いヒビを指します。
基礎コンクリートやモルタルの壁などは、乾燥して固まる過程でヘアクラックが出てしまうこともありますが、エアクラックの対応は緊急性はないため大きな問題にはなりません。
問題なのは、構造クラックです。
構造クラックとは、『クラックの幅が0.3mm以上、深さが5mm以上』のクラックで、放っておくと壁が崩落したリ、雨や水分が侵入することで壁の内部に使用している金属や防水の下にある木(壁)が腐ったりする可能性があります。
ヘアクラックと異なり、緊急な対応が必要なのが構造クラックとなります。
なお、雨漏りは一般的には壁や天井にシミが出来たりするので判断しやすいですが、家の構造により壁にシミが出ない場合もありますので、雨漏りがないからと言って構造クラックを放置するのは危険です。
JIO(瑕疵担保責任保険)は何をしてくれるの?
保険の前に知っておくべきなのが、住宅かし担保履行法です。
住宅かし担保履行法は、国土交通省からアナウンスされていますが、住宅の設計や工事において、ずさんな工事やデータ改ざんなどは発生していることから、消費者保護のため平成21年10月1日に施行された法律です。
瑕疵(かし)とは法律用語で、傷や欠点があったり、法律や当事者の予期するような状態や性質が欠けていることを指します。
かし担保保険とは、本来購入の際に受けた説明の状態であったり不具合が発生している場合に利用できる保険です。
最近も野村不動産のマンションで話題になりましたが、大手の建設会社で且つ超高級マンションであっても、この手の事象は度々発生しています。

そしてJIOは(Japan Inspection Organization)略で、 JIOの瑕疵担保責任保険「わが家の保険」は、『特定住宅瑕疵担保責任の履行の確保等に関する法律』に対応する保険で、保険期間は10年です。
保証されるのは以下の部分です。
・雨水の浸入を防止する部分

勿論、壁の構造クラックが『住宅の構造耐力上主要な部分』や『雨水の浸入を防止する部分』であれば保険対象になります。
なお、JIOに関するポイントについては、マンガで分かりやすく纏まっていますので、あなたの場合が該当するのか?ご確認ください。
https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/jutaku-kentiku.files/kashitanpocorner/dl_files/syouhisya-manga.pdf新築10年未満で構造クラックが発生してる場合は、ほぼ欠陥で確定
今回タクゾーも調べて分かったのですが、新築10年未満で構造クラックが発生してる場合は、ほぼ欠陥で間違いありません。
そしてトラブル解決(工務店に修理してもらう)には、施工した工務店と「何が原因なのか?」について確認する必要がありますが、先ほどの野村不動産の記事のように購入者に分かり難い専門用語ばかりを並べてうやむやにしようとします。
ただし、順を追って確認していくと必ず状況が見えてきますので、冷静に一つずつ確認していきましょう。
構造クラックが発生する理由は幾つかあり、代表的な原因は
- 家が傾いている(地盤改良不足)
- モルタルの施工不良
- 耐力壁の施工不良
- 釘の打ち方
などでしょう。
タクゾーの自宅は10年未満ですが、何度となく構造クラックが発生していますし、もっと言えば、建売で数件同じ物件が周囲にありますが、どの家も構造クラックが発生しています。
こういった場合にも、それぞれの家で発生しているクラックとどう違うのか?を観察すると分析ができます。
その工務店のホームページなどに掲載されている別の建物を確認するのも良いでしょう。
家が傾いている(地盤改良不足)

壁に構造クラックが入る一つの原因として、家が傾いている場合があります。
家が傾ていることで、設計上は力が入らないはずの部分に変な力が加わり、結果として構造クラックが発生する場合があります。
地盤改良不足の場合には、基礎のコンクリートも影響を受けるので、基礎にも構造クラックが発生するはずです。
もし基礎にクラックが発生していないのも関わらず構造クラックが発生している場合は、基礎以外の構造に問題が発生している可能性が高いです。
家が傾いている場合には、ビー玉が転がったり扉や窓が締まりにくかったりしますので、こういった事象でも判断が可能です。
家の傾きは、片頭痛や肩凝りの原因にもなりますので、身体的な異変で気が付くかもしれません。
モルタルの施工不良
今回、建築資材のメーカーである日本化成株式会社に問合せしたところ、いくつの重要な回答を頂きました。
まず、モルタルの出来上がりの品質の差は、正しく施工されているか否かとのことです。
モルタルの説明書には以下説明がありまりますが、
■気温が3℃以下になる場合には、施工を避けてください。
引用元:日本化成株式会社
■本品は既調合品です。指定材料以外の他の材料の混入は避けてください。
■練混ぜに使用する水は、水道水等の清水を使用してください。
■使用後の器具は速やかに水で洗浄してください。
■製品は製造年月日を確認し、3ヶ月以内を目安に使用してください。
この中で重要なのが『施工の際の天候』と『水の配合』と、ここには記載ががありませんが『養生期間』です。
フラット35の仕様で住宅を建設する場合、いくつかの仕様書があり壁に関する仕様については『左官』確認することをお勧めします。
こちらの仕様書には既調合モルタルの養生期間は『工程時間は2週間以上』とすると明記されています。
メーカーによると、モルタルを塗った後に十分乾燥させる期間を守られていない場合には、『強度不足の原因』となり、また、「養生期間はあくまで目安であり、少しでも長い方が良い」との回答を頂きました。
ただし、クラックの直接的な原因になるのではなく、あくまで『強度不足の原因』のですので、実際はモルタル以外の施工に問題があるということになります。
耐力壁の施工不良

木造建築は柱だけでなく壁を含めて耐震性を確保します。
その壁の事を耐力壁と言います。
耐力壁に使用されるボードは幾つかの種類ありますが、10年前だとOSBと呼ばれる輸入合板が使用されているケースがあります。
これは、ちょうど東日本大震災が発生した後に、合板の資材不足の際に代替品として使用されましたが、施工方法は他の合板と変わりません。
最も重要なのは、『隣り合う面材同士の間隔(継手目地)は、2~3mm空けておきます』と記載があります。
この隙間は『湿気による合板の膨張の際に、板同士の衝突を回避させる』ためのものです。
なお、同様の記載はフラット35の仕様にも記載があります。
釘の打ち方

意外にも知られていないのが、釘の打ち方一つで耐力壁の強度が設計通りなりません。
先ほど『耐力壁』という言葉が出てきましたが、家の体力は柱と壁、そして釘の打ち方で変わります。
木造の新築住宅の広告を見ていると『耐震等級2』『耐震等級3』などの記載があります。
これは、震災級の地震の際に、どの程度その住宅が地震に対して耐性があるかを示す指標ですが、その耐震性能のためには耐力壁が設計通りに施工されているのかが重要になります。
そして、その耐力壁に十分な力を発揮させるのは、柱と壁を繋ぐ釘です。
指定の釘、間隔だけでなく、釘がめり込んでいないことが重要になり釘の打ち方一つで壁の忍耐力が大きく低下します。

既に建築済みの住宅の場合は建築時の写真を確認し、正しく施工されているのか確認しましょう。
『国総研資料 第 975 号』は最良の参考資料の一つ
国総研は『国土技術政策総合研究所』の略で、国土交通省が所管する事業において、調査、試験、研究、開発などを行うことを目的に設置された社会資本整備に関する唯一の研究機関で、国土交通省の施設等機関です。
そして『国総研資料 第 975 号』は、国総研が纏めた『木造住宅の耐久性向上に関わる建物外皮の構造・仕様とその評価』に関する研究資料です。
詳しくはホームページを参照頂くのが良いですが、もし何かあなたの家に不具合があるのであれば、同様の事象もしくは関連する事象を事例集から確認するだけでも、解決の糸口になるはずです。
不具合の事例の写真の掲載もあり、解説も大変分かりやすく纏められていますので、気になる文言で検索だけしても良いでしょう。
情報が集まったらインスペクターの意見を聞くのも良い手段
しっかりと工務店に直させるためには、「原因の根本原因の理解と専門家の意見が合っているのか?」の確認のため、インスペークターに相談するのも一つの良い手段です。
ただし、いきなりインスペクターに相談するのではなく、ある程度情報が集まってきたらの相談をオススメします。
というのも、一般にインスペクターへの相談時には料金が掛かることが多いので、事象の原因をある程度自分なりに分析してから相談することをお勧めします。
「欠陥住宅を掴まされた!」と腹を立てていても、建物は直りません。
初回の電話相談を無料で受け付けてくれるNPO団体もありますので、準備が出来たら確認してみましょう。
工務店の提案は冷静に判断すべき

発生しているトラブルについて工務店と交渉すると、何かしらの提案が工務店が出てきます。
工務店としては、なるべく費用を掛けずに発生しているトラブルの回避をしたいため、工務店にとってリーズナブルな提案であったり、フラット35の仕様に沿っていない提案をしてくることもあります。
どのような提案が出てきても、あなたが専門的な知識を有していない場合には、第三者に相談しながら、あなたにとって損のない着地点の模索が重要です。
あなたが納得できる回答を工務店が提案するように、交渉前には誘導するための質問を準備しておくと問題の解決が早くなります。
具体的には、
- 仕様通りに施工し直すか
- 仕様通りに施工できない場合には、合意できそうな代替案に誘導する
などで、納得できない内容なら裁判をする(時間とコストが掛かるので注意が必要)ことも視野に置く必要があります。
その場合にも、住まいるダイヤルから弁護士への相談が可能です。
定期的に自主点検を行いましょう

構造クラックなどの住宅の欠陥が発生しているにもかかわらず、居住者が気が付いていない、もしくは気にしていないケースが多く見受けられます。
瑕疵担保期間は10年間という期限があります。
知らず知らずに10年が過ぎてしまう場合もありますので、定期的に自主的に点検を行いましょう。
そして、何かトラブルを発見したら必ず記録を取りましょう。
都度、スマホで動画で記録しておくと便利です。
クラックなどの不具合が生じている場合で、同じ工務店が建設した建物が周囲にある場合には、その家主に相談するのもありでしょう。
気軽に相談できる人が周りにいると心強い支えになるかもしれません。
まとめ
今回は、新築で購入したにも関わらず発生した住宅トラブルについてのトラブル対応の進め方について寄稿しました。
構造クラックや雨漏りが発生している場合は、間違いなく施工不良ですのでしっかりと工務店に修理してもらうように交渉しましょう。
勿論その工務店が信用できない場合には他の工務店に修理を依頼することも可能ですが、他社が建てた建物の修理を対応してくれる工務店は多くはありません。
先ずは建設した工務店と交渉することで改善プランが出てくるはずです。
新築だからといって、すべての住宅が完璧に仕上げられており、トラブルが発生しないわけではありません。
もし運悪くトラブルが発生してしまった場合には、本記事を参考にして頂ければ幸いです。